水切金具
井 筒 通
男柱金具
 一般建築では、屋根に落ちた雨水の流れを断ち切ることから「水切り」と名付けられた軒先部分。屋台を間近に見上げた時、この水切りで意気揚々と光り輝く金具に誰もが眼を奪われる。限られた空間を最大限に活かし、所狭しと躍動する武者や神獣たちの姿に、改めて錺金具と云う細工技術の素晴らしさを知らされる。

 屋台には柱を取り巻くように水引幕が取り付けられるが、その幕を掛けると殆ど隠れて見えなくなってしまう部分が井筒通である。実はそんな部分にも匠の技が隠されている。

 高欄の四隅にある男柱。先端を擬宝珠で飾るこの柱は、屋台全体から綿密な計算で出された寸法を持っており、その形を損なう事なく飾られた金具は乗り子(太鼓打ち)の空間に結界を張るかの如く輝いている。

 今展示会では、スペースの都合で展示出来ませんでしたが、この他錺金具には、昇総才・総才端・丸桁・井筒端・ツカ柱・縁框と云ったものがあり、それぞれ素晴らしい作品がここ播州にはあります。「匠の技−播州祭り屋台錺金具展」記念写真集「意を打ち技を鏨る」に詳しく収録していますので、受付にてお求め戴きご鑑賞下さい。

【水切金具】

意匠:七福神と唐子
作 :竹内雅泉
材 :銅
地区:灘・松原八幡神社/木場
【水切金具】

意匠:唐子遊び
作 :川村悟司
材 :銅
地区:網干・魚吹八幡神社/平松
【水切金具】

意匠:風神雷神
材 :銅
地区:飾磨・浜の宮天満宮/天神

【井筒通】

意匠:賤ヶ嶽七本槍
材 :真鍮
技法:鍍金
地区:赤穂・塩屋荒神社/塩屋西


※鍍金

  金や銀を水銀と混ぜアマルガ
  ムを作り、これを作品にのせ、
  水銀を蒸発させて金・銀・銅
  を付着させる技法。
【井筒通】

意匠:・一ノ谷合戦 平敦盛の最期
   ・神功皇后西征
   ・伝 豊臣秀吉 肥前名護屋城
    に明國使節を迎う
   ・勧進帳
作 :カナセ・下間清平
材 :銅
地区:赤穂・塩屋荒神社/塩屋東

【男柱金具】

意匠:阿吽獅子
材 :真鍮
地区:御津・富島神社/濱田南(高津)


 飾磨・浜の宮天満宮/宮町が、明治
34年(1901)の祭礼後、高津(現濱田南)
へ譲渡した屋台に施されていたもので、
濱田南では少なくとも昭和51年(1976)
迄現役で使用されてた事が確認されて
いる。
 獅子の表情・構図は勿論の事、厚み
といい、彫りの深さといい、その技術
の素晴らしさは群を抜いている。