御津春日・伊津/水引幕

作:三代目 常三郎
製:昭和9年(1934)
寸:76.0×442.5
[素戔鳴尊大蛇退治]             [坂田金時鯉退治]            [隠岐次郎左衛門鷲退治]         [加藤清正虎退治]
[退治物四場面(総刺繍)]










所有:御津・春日神社/伊津
(平成12年 姫路市書写の里・美術工芸館に寄託)

退治物に描かれる大蛇・鯉・鷲・虎・龍等は神聖な動物とされる反面、
自然災害を引き起こす悪霊とも見立てられ、
天界の空中・地上・水中・地中の悪霊を退治する事により、
災害を鎮めると云う願いを込めて作られた物語と云われている。

退治物四場面は、高欄掛に多い図柄であるが、水引幕では数少なく珍しい。

本作品の図柄は天界の各領域の悪霊を追い払うという意味が込められ、これらを伝説の退治物語によって表現している。
又、幕の帯部分に春日神社の下藤紋が入り、幕地全面に刺繍が施された総刺繍となっている。
大蛇退治の背景には雲、鯉退治の背景には波、鷲退治の背景には松、・虎退治の背景には竹が描かれ幕全面を引き立たせている。
背景の刺繍にも綿盛りをして立体感を出し、二年もの歳月をかけて製作されたと云われ、
人物も眼光鋭く、力強く繊細な作風は絹常最高傑作の一つと云える。