公益財団法人姫路市文化国際交流財団
助成事業構造開示型ミニチュア
〜 播 州 匠 の 技 屋 台 〜
企画・制作:屋台文化保存連絡会/平成28年3月1日完成
御協力戴いた職人方
本体:(宮殿師)奥居 隆夫 師
 昭和21年生まれ。平成12年に兵庫県技能顕功賞を受賞。親方である兄より独立し、
姫路市西今宿で「奥居仏壇宮殿工房」を営む。姫路仏壇の宮殿師(くうでんし)の第
一人者。宮殿師とは仏壇を製作する過程で必要な9人の職人の内の一人で屋根師と
も呼ばれる。屋根師の仕事は、木取り・削り・彫り・組立てという一連の流れで行
われる。オーダー製作の為、全てサイズが違う。内間(うちま)・外間(そとま)・合
間(あいま)という寸法の呼び名があるが、これまでに起こした何百という型紙が引
き出しにきちんと整理されている。パーツの種類はなんと千以上。屋根だけをとっ
ても、棟(むね)・千鳥破風(ちどりはふ)・唐破風(からはふ)・茅負(かやおい)・鬼
板(おにいた)・懸魚(けぎょ)・蟇股(かえるまた)・垂木(たるき)・虹梁(こうりょう)
・桝(ます)・肘木(ひじき)…何百とある。膨大な数のパーツを、一つひとつ作成し
最後に組み立てる。一部ニカワで接着するところもあるが、殆んどの部分は後で分
解できるように組み立てるのだという。驚くことに屋根も全部バラバラにする事が
できる。神業?いや仏業というべきだろうか。
漆塗り:(塗師)砂川  隆 師
 昭和48年生まれ。砂川仏檀店・砂川漆工芸塗師(ぬし)。砂川仏壇店の砂川弘征師
の二男で、平成7年に父の下に修業に入ってから20年を超える。明治中期に飾磨の
砂川本家より暖簾分けしてから四代目にあたる。江戸中期から代々続く塗師・砂川
の伝統を継承し、天然材料「漆」が持つ魅力を最大限引き出す事を心掛け、技術偏
重になる事なく、感覚を養う事が大切であると考える一方、新しい技術の研究も熱
心に行う。その成果として、新たな下地の施工法や蝋色(磨き)法、また変わり塗り
や彩色においても、様々な職人技を播州祭り屋台に伝統工芸として施している。屋
保連会員向け講演会や、平成24年には姫路青年会議所の委員長として「技・職人展
〜屋台装飾に見る平清盛〜」を姫路文学館で開催し、開催2日間で6000名以上の来
場者を集めるなど、播州祭・屋台文化の普及にも活躍中。これまで店として手掛け
た神輿・檀尻・屋台の漆塗りは170台以上!秋祭りの前には、砂川仏壇店が手が
けた地区を中心に屋台蔵を回り、屋台の漆を磨き込む。その数は年々増え、近年で
は毎年延べ100台にものぼると云う。
錺金具:(錺金具師)北角 和久 師
 平成23年に、太子町の竹内錺金具店より独立し、現在は姫路市土山の自宅を工房
として活躍中。
兵庫県立姫路工業高校山岳部の先輩である竹内博之師よりあった、母校への求人を
きっかけに、この錺金具師の世界に入る。播州の祭りに賭ける熱き思いが、播州祭
り屋台の迫力ある錺金具に表れている。
 今回のミニチュア屋台の製作にあたっても、何度も何度も作業場を訪問し打合わ
せを行ったが、いやな顔一つせず耳を傾け、三尺屋台の四分の一の大きさにもかか
わらず、本屋台と同じ錺金具の仕様を快く受けて戴いた。
 北角師が独立後に手がけた屋台は、宮脇、三木の明石町他があり、今年は福崎の
井ノ口や灘地区の新調に関わるなど大変忙しい中、このミニチュア屋台の製作にご
協力戴いた。播州祭り屋台の錺金具文化を継承する錺金具師の一人である。
縫い物:(縫師)川村 定弘 師
 昭和53年2月26日 姫路市大津区生まれ。現在同区在住。平成12年 父である川村
雅美師に入門。

 父・雅美師が開業した「川村刺繍」で播州に伝わる刺繍の技法を用い、平成22年・
23年以降は本格的に製作を担当している。現在は龍や虎等の顔、人物の顔の製作を
行っている。

 屋保連との縁も深く、平成11年「播州祭り屋台−匠の技展」には父の雅美師が、平
成20年「匠の技−播州祭り屋台伝承展」・平成24年「技・職人展〜播州屋台装飾に見る
平清盛〜」にはご本人定弘師に実演戴いた。

 屋保連会員地区の作品は、父・雅美師のものも合せてなんと30地区以上にのぼる。
彫刻:(彫刻師)大木  光 師
 昭和47年11月27日 姫路市飾磨区生まれ。

 昭和63年 姫路市内の中学校を卒業後、15歳で富山県の伝統芸能である井波彫刻
の伝承者・柳沢英一師に師事。平成6年、21歳で「大木彫刻店」を開業・独立。人物
の表情や躍動感の表現には定評がある。

 屋保連とは、姫路青年会議所時代の平成8年「匠の技−播州祭り屋台の彫刻展」
をお手伝い下さったのを皮切りに長いお付き合いを戴いており、平成20年「匠の
技−播州祭り屋台伝承展」平成24年「技・職人展〜播州屋台装飾に見る平清盛〜」
には実演をして下さった。

 屋保連会員地区の作品には、地元・英賀東を始め、妻鹿・津市場北・中地・矢
倉東などがある。
彫刻:(彫師)前田 貴史 師
 昭和49年生まれ。高校を卒業後、国指定伝統工芸品 井波彫刻 田村一門 日展会
友の畠山勲師に師事。同時に富山県井波彫刻高等職業訓練校にて木彫刻の基礎を
学ぶ。

 井波木彫刻高等職業訓練校を卒業後、姫路市にて独立。現在に至る。

 屋保連とは、平成20年「匠の技−播州祭り屋台伝承展」平成24年「技・職人展
〜播州屋台装飾に見る平清盛〜」に実演下さった事に加え、WINK特別番組「祭
りの神髄〜中島天満宮編〜」でも多大なご協力を戴いた。

 屋保連会員地区の作品には、東山・和久・中之丁・児嶋・玉手・中野田などが
ある。その他、展示会や作品展など入選多数。
彫刻:(彫刻 )棒谷 雅敏 師
 昭和48年1月26日 姫路市飾磨区玉地生まれ。現在同市白浜町宇佐崎在住。

 平成8年 富山県南砺市柳沢英ー氏に入門。井波木彫刻工芸高等職業訓練校に入
学。平成13年 同校卒業(ニ級井波木彫刻士習得)。平成17年、姫路市自浜町に「棒
谷木彫工房」を開業、現在に至る。

 屋保連との関わりも、平成17年「匠の技−播州祭り屋台錺金具展」出品の須賀
沢屋台(井筒から上部・棟一式を展示)狭間をご厚意で修復下さったのに始まり、
平成20年「匠の技−播州祭り屋台伝承展」平成24年「技・職人展〜播州屋台装飾
に見る平清盛〜」に実演戴いた。

 屋保連会員地区の作品には、北細江などがある。
彫刻:(彫刻 )高場 正良 師 
 昭和59年 兵庫県高砂市北浜町生まれ。

 東洋大学附属姫路高等学校卒業後、京都伝統工芸専門学校(現京都伝統工芸大学
校)仏具彫刻コースに進学。卒業と同時に、富山県井波の四代目・加茂蕃山師に師
事。

 平成24年 生まれ故郷にて独立し現在に至る。

 屋保連とは、平成24年「技・職人展〜播州屋台装飾に見る平清盛〜」からのお
付き合いで、その時に実演下さった。
木取:(大工)横野 辰徳 師 
 昭和59年生まれ。

 高校を卒業後、上内工務店・上内兼夫師に弟子入りし、12年間の修業を積む。

 上内兼夫師が他界されたのち、上内工務店の後継者として積極的に稼業に邁進。

 本年、処女作として新調屋台を手掛けた。

 技術向上の為、柱芯二尺六寸・二軒の扇垂木の棟を製作中(平成27年9月現在)
協賛(五十音順)
 相生振興株式会社
 アサカ運輸株式会社
 株式会社旭測器
 岡上運輸株式会社
 北野産業株式会社
 株式会社紘宇運輸
 株式会社新栄ビルサービス
 株式会社大晃
 大広整備株式会社
 タツミ産業株式会社
 有限会社ティーバリュース
 株式会社日東社
 日本電研工業株式会社
 株式会社ハマダ
 株式会社浜田運送
 株式会社ビジネスサービス
 姫路中央運送株式会社
 広畑石油株式会社
 松尾印刷株式会社
 菱和運輸株式会社


(テキストDVD)
 有限会社グレイスプランニング
各部位の見どころ!
棟(むね)・紋(もん)
 船大工の技術が取り入れられていると云う、全国で唯一無二の神輿屋根。細い野地板を並べて流れる様な見事な曲線を描く。
 今回は宮殿師(くうでんし)・奥居隆夫師の協力を得て、棟の内部構造が見られる様にした。
 稀に白木のままの屋台もあるが、殆んどの屋台は塗師が漆塗りをし完成させる。本ミニチュアでは、漆塗りの60にも及ぶ工
程を、塗師(ぬし)・砂川隆師に分かり易く示して戴いた。
 また棟の中央に位置する紋は、屋台そのものの或いは地区のシンボルマーク的な役割も果たしており、数多くの意匠がある。
本屋台ではポピュラーな二つの紋、すなわち天満宮の氏子屋台に多く施される「梅鉢紋」と、八幡宮の氏子屋台に多く取り入
れられている「左三つ巴紋」とを採用した。
露盤(ろばん)
 露盤は、擬宝珠(ぎぼし)の基台になる部分で、多くは、檜(ひのき)などの木を彫刻したものに、塗師が彩色(さいしき)を
施す。また数は少ないが、金具製のものもある。
 今回の『播州匠の技屋台』では、彩色せず木目が良く分かる様木地のままにし、図柄は「宝船−七福神」を採用し、棒谷
雅敏師に彫って戴いた。   
昇総才(のぼりそうさ)「箱打ち」「総打ち」   
 棟の頂上から四隅へ流線型を描く昇総才。
 取り付けられる金具を役物と言うが、吉兆(きっちょう)すなわち良い事が起こる前兆として現れる霊妙(れいみょう)な獣
(けもの)いわゆる神獣(しんじゅう)を取り入れる場合が多い。今回は虎・獅子・飛龍(ひりゅう)・麒麟(きりん)を採り入れ
た。
 また役物を取り付ける地金具には、分割された「箱打ち」地金具と、ひとつながりに見える様な「総打ち」地金具がある。
 今回のミニチュア屋台の錺金具は、北角和久師にお願いした。
総才端(そうさばな)・井筒端(いづつばな) 
  昇総才の突端の部位が総才端(そうさばな)。
 その鏡面にも鷹(たか)や鳳凰(ほうおう)や龍(りゅう)、などの役物を取り付ける場合が多いが、
八幡宮・天満宮の文字を施している地区も多い。
 今回は「鯉」に加え、棟の梅鉢紋・左三つ巴紋にちなみ、「天満宮」「八幡宮」を意匠した。
そして四本柱の要・井筒端(いづつばな)の鏡面も、紋・総才端と一貫させるため「梅鉢」と「左
三つ巴」とにした。
水切金具(みずきりかなぐ)
 棟の底辺を水切りと言うが、ここにも神獣は勿論、歴史場面やめでたいしるしである瑞祥(ずいしょう)などの役物金具が施
される。
 本ミニチュアでは「龍虎」と、正月の初夢に見ると良い事があるといわれる夢見瑞祥(ゆめみずいしょう)「一富士二鷹三茄
(いちふじにたかさんなすび)とを配した。
天蓋(てんがい)・垂木(たるき)・斗組(ますぐみ)
 乗り子・太鼓打ちが乗る上部、天蓋(てんがい)も本格的に漆を施し、金箔を押した。
 棟の軒下にあるのを垂木(たるき)と言うが、二段のものや三段のものが有る。ケラボウあるいはセンボンと呼ばれることもある。
今回は、白木の垂木にプラチナ箔を押した!
 錺金具を施された棟の重さを、しっかりと支えるのは四隅にある斗組(ますぐみ)。極めて高度な技術が要求される。本ミニチュ
アでは、これまた本格的な「三手組」に、箔押しをした。
狭間(さま)
 さて、いよいよ狭間(さま)。垂木の下にある彫刻を狭間と
言うが、神代(かみよ)から明治時代までの歴史の場面や、各
地区に因んだ風景などが題材になる事が多い。

『播州匠の技屋台』では、木取りを若手の大工・横野辰徳師
のお手を煩わせ、図柄は見応えある「竹林の虎」「龍」「唐
獅子牡丹」を採用。それぞれ大木光師・前田貴史師・高場正
良師にお願いした。
水引幕(みずひきまく)
 四本柱に巻かれているのを水引幕(みずひきまく)と言う。
手法としては縫い以外にも、蜀江(しょっこう)や雉子(きじ)
などの文様を織ったものがあるが、『播州匠の技屋台』では
ポピュラーな縫いを採用し、川村定弘師にお願いした。

 水引幕の図柄も狭間と同様、歴史の場面や神獣が刺繍され
る場合が多く、本ミニチュアでも『龍」と「虎」とにした。
特に虎に於いては、工程がよく分かる様に縫いを施す前の段
階に留めた。
高欄掛(こうらんがけ)
 乗子が座る周りの囲みを高欄(こうらん)と呼ぶが、ここに
も豪華な縫い物が飾られる。それが高欄掛(こうらんがけ)で
ある。やはり図柄は神獣や退治物、或は地区に因んだ場面・
風景が多い。
 『播州匠の技屋台』ではユーモラスさもお楽しみ戴ける様、
「金太郎」と「熊」とを配した。
高欄・男柱金具(こうらん・おとこばしらかなぐ)
 高欄の四隅の柱を男柱と言い、ここに取り付ける金具には、
本ミニチュアで採用した「昇鯉(のぼりごい)」などの縁起物
や、「龍」の様な邪鬼物、また「梅に鶯(うぐいす)」など風
流な意匠(いしょう)もある。
その他の《こだわり》
太鼓(たいこ)
 太鼓は屋台を動かす源。そのリズム・強弱により屋台に躍
動感が生まれる。それだけに太鼓を打つ乗子は、祭りの花形
と言える。

“構造開示型ミニチュア”と銘打った本屋台では、鏡面を透
明にして太鼓も内部構造が見える様にした。ちょうさ屋殿の
労作である。
伊達綱の環(だてづなのかん)・弦の綱(げんのつな)
 以上、職人さん方の渾身のご協力にて、ミニチュアとは思えない本格的な屋台が完成したが、上の太鼓のほかにも、ホン
モノを再現するために、細部にもこだわった。 それが、この「伊達綱の環」と「弦の綱」である。