1.提案の背景・経緯

 かつては一世を風靡し、全国にその名を轟かせた播州彫刻の系譜は、地元播州に於いては細い枝を除いて途絶えている為、その存在はごく一部の市民にしか知られていなかった。そればかりか、作品の本当の価値が理解されていない為、手荒く扱われたり破棄されたり、年を経る毎に素晴らしい作品が失われつつあるのが実情であった。

 他方、播州彫刻の流れを汲む岸和田・淡路等、共通文化保有地域では、播州彫刻の系統が隆々として栄え、畏敬の念を以って遇されている。特に岸和田に於いては、播州飾磨彫刻師としてその名と偉業とを施設に留めている。

 この様な情況を鑑み、平成8年、(社)姫路青年会議所が「存亡の岐路に立つ播州彫刻」として焦点を当て、姫路市書写の里・美術工芸館と協働で、「匠の技−播州祭り屋台の彫刻展」を開催し、姫路・播磨地域はもとより、全国各地から開館以来の記録的な来館者を集めると共に、同展記念写真集・記念CD−ROM「意を彫り技を刻む」の刊行等を通して、広く播州固有文化の情報発信活動を開始した。

 こうした活動により、各地で保存会が結成されたり、或は伝統を守って行こうとの決議がなされたり、貴重な播州固有の文化財をそれぞれの地区で保存して行こうとの気運が芽生え始めた。

 その後彫刻のみならず、播州の祭・屋台に関するソフト・ハード両面に亘る文化財を継承・保存・情報発信して行かなければならないとの声が各地域から沸き起こり、平成10年7月12日、播州祭・屋台文化の継承と保存・情報発信施設の建設とを目的として、姫路市内外約50の自治会と(社)姫路青年会議所とで屋台文化保存連絡会を結成し本格的な活動に入った。

 以降、行政・JC・市民(屋台文化保存連絡会)での三者協働の下に、平成11年・12年・14年の三度に亘る姫路市書写の里・美術工芸館での展示会の継続開催(※)、「匠の技−播州祭り屋台刺しゅう展」記念写真集「意を縫い技を織る」の刊行、将来の会館建設に向けての祭・屋台関連物件の寄贈・寄託支援を行う一方、独自事業として、各種イベントでの建設訴求活動、会報の発行、播州屋台会館を模したホームページの開設、建設促進ポスターの発行、その他祭・屋台文化関連事業への支援・協力・協賛等、情報発信事業に止まらず所期の目的達成に向け、一般市民をも巻き込んだ種々の活動を展開して来た。

 こうした活動を通じ、

  (1)祭・屋台と云う播州固有文化の継承と保存・情報発信に資する施設建設に対する、市民の意識の醸成は充分に図られた

  (2)歴史と風土に根ざした祭りに関する習俗、或はその祭りで使用される有形・無形の文化財は、調査・研究・蒐集が遅れると、遅れた分だけ後世に
    伝えられる可能性が低くなる

  (3)姫路市新総合計画にある、「安全で安心して快適に暮らせる心かよう交流都市・姫路」を実現する為に必要な、高次な都市機能を備えた活力と魅
    力が増していく都市づくりとしての、

    @姫路市・播磨都市圏の将来を支える新たな基盤整備の一つ
    A姫路市・播磨都市圏の更なる魅力と活力とを創造して行く為の高次都市施設の一つ

 以上の判断・観点に立ち、茲に『「播州屋台会館(仮称)」早期建設 提案書』を提出する次第である。

     (※)平成11年:「播州祭り屋台−匠の技展」
        平成12年:「匠の技−播州祭り屋台刺しゅう展」
        平成14年:「祭礼図絵馬にみる屋台装飾展」